Blog by A psychiatrist in Japan.

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渋谷の公園の樹木

2010-05-12

五月病



「五月病」......と世の中では言われるこの月。文字だけ見ると5月限定、6月だったらお断りか?と丸で限定商品のような印象にみえて仕方がない。
 この「五月病」は、厳密にいうと世界的に使用する精神疾患の判断基準(ICD-10やDSM-Ⅳ TRナド)には記載がない。医学的診断名で考えるならば、適応障害、鬱病(感情障害のカテゴリー)、季節性感情障害で
あるが、5月限定の疾患名は見当たらないのだ。
 ナゼか?日本は、4月から学校や会社が始まる所から由来する。故郷を後にして上京するのが、大体4月。そして始めは開放感やら緊張で4月は乗り越えられるけれども月の終わり頃にそのツケが到来する。ツケとは、疲れやストレス増加、将又ホームシックなどだと思う。
 そんな頃、旨い具合にゴールデンウィークがやって来る。そこで、上手に消化出来れば良いのだが、そう簡単にひと月分の積もり積もった膿は排泄出来ないモノである。もしくは、帰郷して「もう現実の世界に戻りたくない」と思う人もいる事だろう。そんなこんなで、お疲れ状態のまま現実に戻り、「ああ、お盆まで休みがない、六月は祝日がない」「ジメ〜っとした梅雨が来る」と考えると更に鬱々とした気分は膨れ上がって、ゴールデンウィーク明けの五月に多く診療所や病院を訪れる方が多いので「五月病」と言われるのだろう。
 しかし、診療所を営む私の見解では、最近は五月限定様の傾向から六月まで延長可能の傾向が見受けられる気がする。特に新入社会人のカタガタ。(本当にお疲れさまです。)
 社会人となり、業務内容を覚えるだけでも大変なのに、そこへ
学生とは違う雰囲気、仕来り、礼儀作法などなど戸惑い、合わせるだけでも精一杯なのではないだろうか?
 特に真面目な人ほど帰宅してバタン→就寝→朝→出社
で、緊張しストレスも溜まり、発散方法も見つける間もないと容易に想像出来る。そして、真面目なヒト程ぎりぎりまで根性込めて仕事をし6月位に臨界点を超えて診療所に来られるようである。しかし、真面目な性格の大概の方々は、「そんなに真面目でも几帳面でもありません」と言う。自分を低く見すぎているが故に否定されるのだ。
 反面、ノホホンとした人の方がマイペースなので病的範囲まで鬱々とした状態に至りにくい、と勝手に思っている。
 なので、私は訪れる5〜6月病の方々には何時もお伝えしている言葉がある。
 「ノウ天気になってくださいとは言わないですが、多少はそういう人の人生観を頂いてみてはどうでしょう?」

 先日、そういえばテレビで某有名なコメンテーターが言っておられました。「KYの人はなりにくいですよねえ」と。
私も「KYのススメ」をしたほうが患者様には分かりやすいのかもしれないと思ってしまった。